シュティール「かなり北の国ですね。ここはどんな所なんです?」
リスターナ「ん〜〜〜……ま、一言でいえば、珍しい国だな」
シュティール「珍しい?」
リスターナ「ああ。色々と珍しいモノ揃いなんだが……まず一つ目が、亜人種の割合がめちゃめちゃ高い」
シュティール「え? でも、それを言うなら、トロウだって亜人種がいっぱいいますよ」
リスターナ「うーん……説明が悪かったな。かいつまんで言えば、政治にかかわっている亜人種がめちゃめちゃ多いんだよ」
シュティール「…………?」
リスターナ「もうちっと分かりやすく言うとだ。爵位を与えられている者たちの中で、確か半分くらいは亜人種だって噂だ」
シュティール「半分!?」
リスターナ「多いだろ? しかもその中には、あの偏屈&他人種嫌いで有名なラーバード族もいるんだぜ」
シュティール「ラーバードなんて、フラウティアじゃ見たこともありません……」
リスターナ「もちろん生活習慣の違いから、住むところはそれぞれの種族ごとに、そこそこ区切りはされているんだけどな。それも絶対なものじゃない。どこに住んでも良いわけだ」
シュティール「理想的国家って感じですね」
リスターナ「まぁ、それが理想的かどうかは、住んでみないことには分からないけどな」
シュティール「まぁ、それはそうですけどね……」
リスターナ「さて。次に、この国を『共和国』と名づけているホントの理由なんだが……実は、この国には『王』という存在がない。いや、まぁ王はいるんだが……」
シュティール「………え? どういう意味です?」
リスターナ「つまりな、王が実権を握っていないんだよ。単なる『象徴』的な存在として外交関係の仕事をしているってだけで、それほどの権力を持っていない」
シュティール「それじゃ、誰が実権を握っているんです?」
リスターナ「このへんは、ドワーフ族の考え方と似てるんだな。実は民衆から選ばれるんだよ」
シュティール「……って、一般人からですか!?」
リスターナ「珍しいだろ? 今から十二、三年前だったかな? アームズ共和国がまだアームズ王国だった頃、突如、アームズ国国王カーレイア・リーダムが病死。で、王権はその息子に渡ったんだが……なにを思ったかその王子さん、それを放棄しちまったんだ」
シュティール「はぁ……それから?」
リスターナ「とにかく一時期、その権利を巡ってもめにもめたんだが……ある日、その王子の家庭教師兼軍師をやってた奴――名前は知らんが――が言ったんだと。『王を皆で選ぼう』ってな」
シュティール「それが通っちゃったんですか? それもすごいな……」
リスターナ「うん。それで結局、ドワーフ族の王の選び方を手本に、国王……とはもう言わないな。『代表』を皆で選ぶようになったんだ」
シュティール「リーダム王家って、評判悪かったんですか?」
リスターナ「いーや! 評判のいい国だったぜ。少なくとも俺は、悪い噂を聞いたことがない」
シュティール「じゃ、どうしてその王子は継承権を放棄したんでしょうね?」
リスターナ「さぁなぁ。そればっかりは会って聞いてみるしか……って、お前も元・良家の坊っちゃんじゃないか。似たような立場だろ?」
シュティール「違いますよ。フラウティアの革命議会は腐りきっています」
リスターナ「あ、なるほど。でかいなぁ、その差は……」
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