シュティール「…………」
リスターナ「ん? どした?」
シュティール「いえ、ちょっと……」
リスターナ「……あ、そーか。お前、この国とは少なからず因縁があったな」
シュティール「あまり行きたいと思える国じゃないことは確かです」
リスターナ「ふむ…まぁ、観光案内程度に聞いとけや」
シュティール「はい」
リスターナ「まぁ、観光会社も、この国への旅行はすすめないだろうけどなぁ」
シュティール「他国の人間に、やたら厳しい国ですよね」
リスターナ「うん。前に一度、行ったことがあるんだが、五つも六つも城壁がありやがってな。しかもそこに行く度に、検問をくぐらなきゃならない」
シュティール「へぇ……」
リスターナ「その分、治安はすこぶるいい。ロウハ達との放浪の間に通過しただけだけど、俺はこの国に滞在している間は気楽にすごせたよ」
シュティール「それは意外ですね……」
リスターナ「まぁ、一番中央に近いとこだったからかもしれないけどな。6番城門の外は、傭兵たちの溜まり場で、治安もあってないようなもんだって聞いたことはある。行ったことないんでよく知らないけどな」
シュティール「あそこの傭兵団は有名ですね」
リスターナ「その傭兵団の中でも、第十三番傭兵団「愚者の団」の団長で『つのなし』の二つ名を持つなんとかってボーンレットがいるらしいんだが……そいつは、生身の体でロウハのピエロ・ザ・モンテカルロ相手に互角に戦ったらしい」
シュティール「……冗談ですよね?」
リスターナ「本人にきいてみるか?」
シュティール「…………」
ドレス帝国は大陸中央部最大の、そして最強の軍事国家です。
ですがその周りを取り巻く環境がドレス帝国を『大陸最大最強』ではなく、『大陸中央部最大最強』という肩書きにとどめてしまっています。
南は熱砂の環境がトロウへの侵略を阻むシリル砂漠。
東は『雄大なる高低』タジア高原に住まうフェンラン族がファーレン、聖エトラムル王国への進行を妨げる。
北に地平線すら超えるほど広がるカハ平原にはアームズ共和国と手を結んだケンタウロス族、クラケット族が足かせとなっています。
西のテムエル山脈は高低緩やかなれど、そこに住まうエルフ族、ライグル族が森を守らんと全力で立ち向かいます。もしそこを超えきったとしても、そのあとに待ち構えるのはアダマンタイトに住まうドワーフ族、ボーンレット族。彼らは最高の職人であり、最強の戦士です。西部諸国に届く頃には疲れきっていることでしょう。
ですがドレス帝国とて、いつまでもおとなしくしているわけではありません。ドレス帝国の王シャイアルは「王の五本指輪」と呼ばれる五大筆頭騎士団。そして「十二枚金貨」と呼ばれる十二傭兵団を抱え、着々と己の計略を進行させています。
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