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国名

『大商都』トロウ

 

リスターナ「この国は、なにもかもがすっげぇ」
シュティール「大陸で、一番大きな国ですよね?」
リスターナ「ああ、大陸で百万の民を抱える都市はこの国くらいだろうなぁ」
シュティール「百万ですか……」
リスターナ「まぁ、実際数えた奴がいるのかどうか知らんけど……とにかくすっげぇ国だよ」
シュティール「ははぁ……」
リスターナ「空、陸、海をそれぞれの縄張りにして荒稼ぎしている3人の商人がいてな。そいつらのおかげで、この国はめちゃめちゃ羽振りがいいわけだ」
シュティール「空のカルティルト、陸のサラディン、海のグランカルヴァーって呼ばれる3人の商人ですね?」
リスターナ「……へぇよく知ってやがるな。そんな社会の授業で出るようなこと」
シュティール「家庭教師の先生から、きいたことがあります」
リスターナ「そか。とにかく、その3人の財力と国への影響力はすさまじい」
シュティール「そんなに凄いんですか?」
リスターナ「ああ、国王ですらこいつらの発言は無視できんって言われてるし、こいつらがもってる金は国の五つや六つ楽に買えちまえるほどだってよ」
シュティール「……なんだか、話が大きすぎてピンときません」
リスターナ「ま、な。そんだけすげぇってことよ」
シュティール「はぁ、憶えておきます」
リスターナ「この国には年に二回でっかい祭があるんだが、それのまた豪勢なこと豪勢なこと……」
シュティール「百万人がかりのお祭ですかぁ……想像するだに凄そうですね」
リスターナ「それを目当てに、ほかの国からもぞくぞくと人が来るからなぁ。商人たちも儲け時ってことだ。そんじゃ、その商人達についてピックアップしてみよか」

三人の大商人

『海の』グランカルヴァー

リスターナ「このグランカルヴァーの二つ名のうちの一つが『法の』グランカルヴァーだ」
シュティール「法のグランカルヴァー?」
リスターナ「ああ、とにかく法に基づいて一つ一つ、気が遠くなるくらい根気よく契約していくんだよ。めっちゃ互いの利益考えて」
シュティール「商人の鏡みたいな人ですね」
リスターナ「言われてみるとそうだなぁ。とにかく、このグランカルヴァーは、奇をてらったことは一切しない。いや、する必要がないと言った方がいいかな」
シュティール「その影響力だけで、十分儲けられるってことですか?」
リスターナ「あたり。もはや一つの国だ。しかも完成されている、な」
シュティール「確か三商人の中で、一番古く、そして財力が一番多いんでしたよね?」
リスターナ「勉強してるねぇ。シュティール君」
シュティール「いえ、まぁ……」
リスターナ「ふむ。で、もう一つの二つ名『海の』グランカルヴァー。こいつが凄い」
シュティール「どう凄いんですか?」
リスターナ「100テーセル(約200メートル)級の超特大貿易船五隻! その五隻を中心にした大貿易船団『ランド』。これがグランカルヴァーが『海の』二つ名を拝している理由だ」
シュティール「100テーセル!? トロウの軍艦より大きいじゃないですか!?」
リスターナ「すげぇだろぉ? 俺も一度見たけど、あまりのでかさに腰抜かしちまいそうだったもんなぁ。しかも今、150テーセル級の超ド級貿易船を二隻建造中らしい」
シュティール「無茶苦茶ですね……」
リスターナ「話がでか過ぎて、やっぱりピンとこねぇだろ?」

三人の大商人

『陸の』サラディン

リスターナ「さて、この『陸の』サラディンは、グランカルヴァーと対照的な商人つっていいだろうな」
シュティール「対照的というと?」
リスターナ「あぁ。とにかく手段が強引なんだよ。時には暴力的な手段を使ってでも、自分の計画を推し進めちまうんだから」
シュティール「暴君型の人間ですね?」
リスターナ「まぁ、たった一世代でここまででっかくした商人だからな。それくらいやんないとだめなんだろうけどな」
シュティール「一世代であんなに儲けたんですか!?」
リスターナ「ああ、もとはそこそこなんだけど、グランカルヴァーやカルティルトに比べると、ひ弱な商人だったらしいんだが……五十年前、今の代カーヴェンター・サラディンに移ってから、一つの事業に手を染めたんだよ」
シュティール「あの有名な『駅』、鉄道ですね?」
リスターナ「そゆこと。とにかく強引な手段で各国と次々と契約交わして金出させて、たちまちのうちに大路線を作っちまった」
シュティール「五十年でほぼ大陸の半分を横断……凄い勢いですね」
リスターナ「いったいどうやればそんなことができるのかねぇ。それでだ、この鉄道を敷くための土地は全てサラディンが買い取ったらしくて、言わばこの鉄道が、細長い『サラディン』っていう国なんだよ」
シュティール「そう言えば、国ごとにある駅って、確か治外法権でしたね?」
リスターナ「そゆこと。駅はサラディンが独自に立てた法案のもと動いてる。もちろん、独自の軍隊も持ってる」
シュティール「聞けば聞くほど、どうやって五十年で、そんなことができるんでしょうね?」
リスターナ「そだな」

三人の大商人

『空の』カルティルト

リスターナ「このカルティルトは、奇をてらった策を用いてのし上がってきた商人だ」
シュティール「奇をてらう?」
リスターナ「そそ。トロウの北にある荒野を安値で買い取ったのが、このカルティルトの歴史の始まりと言ってもいいだろうな」
シュティール「そんなところを買いとって、どうしたんです?」
リスターナ「飛行場にしちまったんだよ。まだ実用段階になかった飛行船のために」
シュティール「てことは、今から……」
リスターナ「三十年くらい前だな。カルティルト家の資金のほとんどをそれにつぎ込んで、大博打を打ったわけだ」
シュティール「賭けには勝ちましたね」
リスターナ「完勝だな。安全性、速度、輸送能力が格段に上がったその飛行船は、どんどんバージョンアップして、今では30テーセル(約60メートル)の飛行船2隻を中心とした27隻の大飛行船団になっている。その船団『雲(クラウド)』が、大陸のいたる所で物資の流通に一役買っていることは、知ってのとおりだ」
シュティール「新しい貿易の形態を開拓したんですね」
リスターナ「ああ。今でも大陸北部は、ほぼカルティルトの独占だな。まぁ、グランカルヴァー、サラディンにはわざわざ北部にまで出張る必要はないってのが主な理由だが…」
シュティール「ふむふむ……」
リスターナ「そういや、確かカルティルト・ファウト・ヤーの孫娘がつい最近逃げ出したって聞いたが……」
シュティール「なんでまた?」
リスターナ「さてなぁ……金持ちは金持ちで、なんか悩みでもあるんじゃねぇか?」


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