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国名

フィアレンスベァク

 

リスターナ「さて、この国は他の国に比べて非常に特色ある国だ」
リデリア「ほぅ。他国には我が国はそのような評価を受けているのか?」
リスターナ「へ? げっ!? フィアレンスベァクの王女様!?」
リデリア「よい。今はお忍びの身、咎めはせぬ」
リスターナ「ってか、なんで王女様がこんな場末の酒場に?」
リデリア「なにを言うか。このような場にこそ様々な文化と民の意見が行き交うのであるぞ。民を導く王族に生まれたからには、このような場こそ経験し、民と同じ物を食し、民と同じ話を聞き……モグモグ……ああ、暖かくて美味じゃ。まったく、城の食事は毒見と称していちいち時間をかける故、冷めてうまくない(モグモグ)」
リスターナ「(ただメシ食いに来ただけかよ。おてんば姫の二つ名は伊達じゃねぇな・・・)」



リスターナ「では姫、私の私見ですが、フィアレンスベァクの説明をば」
リデリア「うむ。元々閉鎖的な国ゆえ、他国の意見は非常に興味深い。遠慮なく申すが良い」
リスターナ「御意。では失礼かと存じますが、多少言動が砕けますがよろしいですか?」
リデリア「許す」
リスターナ「さんくす。助かる。はぁ〜〜〜〜肩凝ったぁ。んでこのフィアレンスベァクなんだけど、最大の特色は今までの文化的、外交的な鎖国制度を取っていたために、独自の文化が発展していってるという点だ」
リデリア「確かにの、もっとも対等に交易を行おうとする国がなかったという点が大きいと思うがの」
リスターナ「つまり?」
リデリア「交易価値がないと思われたのだろう」
リスターナ「へぇ……スパっと言えるのはたいしたもんだ」
リデリア「たとえ身内とはいえ、それくらいの自覚はある」
リスターナ「おみそれしました。だが、最近になってその動きに変化が出てきた」
リデリア「それは?」
リスターナ「公益が無かったために、この五十年で最大の影響を与えたという技術――魔導力学法――の恩恵と影響を受けていないという点」
リデリア「そうであるな。我が国では魔導力学の研究は遅々として進んでおらぬ。いや、いっそ取り組んでおらぬと言ったほうが良い」
リスターナ「だけど、それによって特別な文化が発展していった。その最もたるものが火薬の製造技術と銃器と呼ばれるこの国独自の武器だ」
リデリア「それが他国から興味を抱かれた理由とは……少々残念だがの」
リスターナ「ま、確かにね。だけどそれによってフィアレンスベァクの評価と、そして影響が上がってきたのは事実だ」
リデリア「他国の興味を引いたのだな」
リスターナ「そゆこと。しっかし面白い兵器を考えたもんだよ。たぶん、ここ数十年で爆発的に普及するだろうな」
リデリア「魔導力学法の普及も、研究発表から50年ほどで爆発的だったからのぅ」
リスターナ「有効的な技術だからな。しかも魔導力学よりも素養は必要ない。つまり誰でも使える。だからこそ、あんたんところの王様は鎖国を解かないのかもな」
リデリア「どういう意味じゃ?」
リスターナ「この武器の危険性を重々承知してるんじゃない? 魔導力学法と大きく違う点は、その扱いの簡単さにある。火薬入れて、弾込めて、引き金引けば誰にでも撃てる。つまり――」
リデリア「つまり?」
リスターナ「『うっかり』人が殺せる」
リデリア「…………」
リスターナ「それを知ってるのか、それとも本能的にかしらないけど、鎖国を続ける王は賢明だとは思うが……ね。そろそろ抑えるのも限界だろ?」
リデリア「……そうじゃな。新聞でも取り上げられるほど、他国からの好条件での国交の申し出があるそうじゃ」
リスターナ「新しい時代を迎えるかもしれないな。それによくここまで鎖国制度を貫けたのも不思議だし……神々が閂をかけた国――ってのは、案外正しい表現なのかもな」
リデリア「そうじゃな」

説明

概要
 イスリアヌ山系とサム湖によって四方を囲まれた国。
 諸大国から見て一言で言うとド田舎。
 50年程前まで群雄割拠の戦国時代であった。
 更に近年まで鎖国政策を採っていた為、諸大国との正式な関係はなく文化交流も少ない。
 対外的には僅かにアダマンタイトやミスリル、旧フラウティア皇国等の隣接各国と交流があるのみである。
 その為か魔導力学は控えめに言っても盛んではなく、かわりに物理化学等が進んでいる。
 特に長い戦乱の為火薬・火砲技術が奇形的に進歩している。

地勢
 サム湖南岸、ミスリルの北、フラウティアの西、アダマンタイトの北東。
 ミスリル、フラウティア、アダマンタイトとはイスリアヌ山脈で隔てられている。
 国土は広めで、北はサム湖南岸、東と南はイスリアヌ山脈の峰峰を一応の国境としている。
 王都フィアレンスベァクはサム湖南岸から少し内陸よりに位置している。
 大別して西部州、中部州、南部州、北部州で構成されている。

資源と産業
 サム湖周辺では漁業、中西部では農業、南部と北部では鉱工業が盛ん。
 南部の鉱山では良質の鉄鉱石が、北部の鉱山では銀や錫、ニッケル等の金属が産出される。
 近年、アダマンタイトより技師を招く等冶金技術の向上に力を入れている。
 北部州では鉱工業の他に畜産業も盛んで、特に良馬の産地として知られている。
 中西部に広がる平野はイスリアヌ山系からサム湖へ流れ込む川のお陰で土壌が比較的豊かで、その為中西部では農業が盛んに行われている。
 他の地方でも農業は行われているが中西部に比べ規模は小さい。
 因みに中部州は小麦とエール、西部州・北部州は葡萄とワインを特産としている。

交通・交易
 国内交通路は比較的整備されており、国内主要都市を結ぶ幹線は石畳で舗装されている。
 しかし、四方を峻険な山脈と広大なサム湖に囲まれている為、他国との大規模な交易はない。
 アダマンタイトとミスリルとの間に数本の交易路があるだけである。
 これら交易路も鎖国政策が解かれてから整備したばかりの物であり、お世辞にも大規模とは言えない。
 ちなみに、アダマンタイトへは鉱物資源と生活物資を、ミスリルへは金属製品と水産物を輸出している。
 以前、ミスリルまで伸びている鉄道を国内まで誘致しようとの試みがあった。
 しかし、そのためには広大な森林を切り開かねばならず、更にイスリアヌ山脈を越えねばならない。
 その為ミスリル側の強硬な反対と財政上技術上の諸問題を惹起し頓挫している。
 近年サム湖沿岸の水運を拡大し、サム湖対岸以遠との交易路を開設しようとの計画がある。

歴史
 210年前、この地域一帯を支配していたジルメク帝国が内乱により崩壊。
 その後フィアレンスベァク王国建国まで群雄割拠の戦国時代となった。
 50年前、ゲオルク・フィアレンスが全国を統一しフィアレンスベァク王国創立を宣言。
 王国成立と同時に鎖国政策を採る。国内の安定化と王家権勢の基盤固めの為と言われている。
 22年前先王ルドルフが登極、限定的ながら鎖国を解除する。
 10年前現王レドリックが即位、徐々に隣国との国交を回復させ始めている。
 因みに、フィアレンス王家は旧ジルメク帝国皇家ホーファンス家の傍流で、レドリックはその第15代当主にあたる。

近年の状況
 7年前のフラウティア内戦では中立を維持。
 王党派の援護要請にも軍を動かすことはなく、国境を封鎖し不干渉の立場を貫いた。
 大勢が決した後も国境の封鎖は解かれなかった。これは革命機運の自国への伝播を怖れた為である。
 現在もフラウティア共和国とは国交断絶状態にある。
 フラウティア内戦終結後、国内ではフラウティア脅威論が持ちあがり、最後には『革命議会討つべし』と南征論にまで発展。
 しかし、レドリック王は『みだりに兵を挙げるべからず』との勅命を出し、混乱の収拾に注力し事態を沈静化した。
 とはいえ、フラウティアに革命が起こった『事実』とその裏に居るドレス帝国の脅威は依然として認識されていた。
 4年前、国王はそれら脅威に対し国内の態勢を整えるべく国政改革に着手。
 軍体制の合理化、産業の近代化、農政の改革等を策定した。
 1年前、国政改革に伴う軍制改革により軍に対する権限を失うことを嫌った南部州諸侯が反旗を翻し南領争乱が発生。
 深刻な内戦に陥るかに見えたが、僅か3ヶ月で鎮圧に成功した。
 現在は南領争乱の後処理も一区切り付き、国政改革の成果も現れ始め国内は落ち着きを取り戻しつつある。

特徴
 この国では魔導力学は全くと言って良いほど普及していない。
 とは言え別に禁忌とされている訳ではなく、地勢的理由と鎖国政策により単に広く知られていないだけである。
 街中で魔法を使うとかなり珍しがられるだろう。地方だと外法使いと恐れられるかもしれない。
 不用意な魔法の使い方をすると官憲のお世話になることは間違い無い。
 この辺り世の中の大半とは正反対である。
 また戦国時代が長く続いた為、火薬兵器が奇形的に発達している。
 3方を囲むイスリアヌ山系で硝石や硫黄など火薬生成に必要な資源が豊富に採れた事もその大きな要因ではある。

火砲
 ジルメク帝国崩壊時に既に原型のあった火砲は、打ち続く戦乱で急速に発展を遂げた。
 歩兵は長槍の代わりに銃を携え、投石器や重弩砲等の攻城兵器は大砲に取って代わられた。
 その大砲も弾薬の進歩により兵馬に対しても用いられる様になった。
 これら火薬兵器の奇形的発展は戦場から騎士を駆逐してしまった。
 現在兵科としての騎兵は残っているものの、これは「騎乗銃兵」つまり機動力のある歩兵という意味である。


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