ジョルダン人情編3◆蒼い紅海、赤いペトラVol.1


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1999年9月29日(水)ワディムサ〜アカバ

早起きは三文のトクというが、早起きしてエラい目にあった。
グウグウ寝てるチョクをほっておき、貴婦人らしく 洗面所でみだしなみを整えていると、背中に熱い視線。
「オ〜〜!モ〜ニ〜〜ンきあ〜〜」
ドミが同じのイタリア人、ジーノがおおげさなアクションとともに、いきなりいきなり きあに抱きついてきたのだ。しかもベアハッグ状態でガッチリと。 ぎょえ〜だずげでえ〜〜!!!
なんとか魔の手から離れ、顔を引きつらせていると
「きあ〜バチョーネ〜(kiss)」
とクチビルをつきだしてきた。もうカンベンしてくれラテンブラッド。
「ユ、ユアキディング!(冗談でショ!)」と 半笑いしながらそそくさと逃げるように後ずさるきあ。 いままでどの国でも一度もクドかれたことのなかった私が、 なぜジョルダンでイタリアンに貞操の危機を抱かねばならんのか。まったくもって トホホである。

アカバ湾
ホテルの部屋からの眺めにこだわった。海の向こうはイスラエル

さて、「木曜日の夜にここで会おう」というオフィーリア宛への メッセージをレセプションに預け、バスへ乗り込む。と、チョクが行きなり叫んだ。
「うわっ!きあ、きあオイ!ピエールだよピエール!」
はい?あ!死海で泥んこ遊びを一緒にしたあのフランス人のピエール!? 偶然、同じミニバスに乗り合わせ再会した私たち。ヨルダンは見どころも 限られているし、こうやって旅人たちが再会することも多いのだろう。 なんだか全旅人友達状態のような気がして嬉しくなるぜ。

岩と土だらけのレキ砂漠だった風景にいきなり青がとびこんでくる。 ワディムサから2時間、紅海のはしっこアカバ。
それはそれは見事なブルー。気分はすっかりリゾートだ。

バスターミナルにつきトボトボと当てもなく歩くが、私たちの目的は一致していた。 このへんの価値観があう旅の道連れというのはすごく楽。
「ここまで来て、窓のないような海のみえないような安宿に 泊まるなんてバカげている。少しお金をだしてもいいから、絶対オーシャンビューの 宿を捜すのだ。ここはリゾート地なのだ!」
である。とはいえ、上限は1泊7JDまで。ドアマンのいるような 高級ではなく、中級宿希望。でもそんなとこあるのかしらと思いながらも とにかく海沿いを歩き、適当にアタックすることにした。
すると、偶然ロイヤルジョルダンエアの看板のついた オフィスを発見。あ、そうだ、リコンファームしておこう、と思い立った私たちが そこで出会うアリ。近くでレストランを経営しているという オヤジである。

アリは商人根性まるだしなのだが、なぜか目にあのアラブ商人の ギラリとしたものがなく、未だにそこに好感がいだけるオヤジで、このアカバ 滞在ではめちゃくちゃ世話になりっぱなしになるのだ。 そして、とにかく面白い。冗談がおもしろいのではなく、いちいちリアクションが 面白い。 リコンファームの間、いいホテルはないか?とアリに訪ねてみると
「ンモ〜まかせて!こい!とにかくついてこいっ。 チェックインしたら俺のレストランにこいっ」
と元気いっぱいだ。

sagher hotel
立地よし。ジョルダン人観光客しか泊まってなかった。

そのSAGHER HOTELの前はただの空き地でそのまま海。 視界をさえぎるものはなにもない。
そしてレセプションの感じもよろしい。さあ、そしてお部屋チェック。 階段をえっちらのぼって通された部屋は、合格点以上! まず、眺めは最高。天井にはでっかいファン。壁にそのままはめこんだエアコン。 ドレッサーもタンスもついて、しかも冷蔵庫までついているじゃないか。キャー! これでひとり6JDは文句のつけようもございません。
だってこの旅できあがくちぐせのように言っていたのは「わたしは 今回ケチらない、リッチな旅をめざしているのよ。ほほほ」ですもの。

ホテルから徒歩30秒というアリの店アカバレストランでも、 従業員達とアリに存分なもてなしをうける。みな気のいい男衆ばかりで、 なんの気後れも遠慮もせずにオンナの私が楽しめるイスラム国というのは本当に面白いね。
さらに、アリは商人としては商売は商売、と割り切り、 ただのジョルダン人としては心からアカバを楽しんでほしいと思っているのがよくわかる。 しかもなにかを私たちが言うと「それならこの金額でどう?」と きちんと提示するのだ。
アリのやり方はすごく正しいと思う。親切ぶって最後に金をまきあげようと するよりも、最初からお金のことを持ち出されたほうが気が楽だ。 そうすれば私たちも割りきれる。
結局、2日間のアカバ滞在の間、本当においしい&地元の人間しかこないお店。というのが気に入って 食事はアリのレストランでしかしなかった。メインロード周辺の他の店はミョウに 西洋風でしかも欧米人がウジャウジャたむろっている味気ない感じだったので 寄り付きさえもしなかった。

浜辺の天使
浜辺で天使が遊んでいました。

さて、世界一美しい紅海(のはしっこ)を堪能するためにさっそくビーチへGO! ただし、入場料のいるビーチではなく、ヨルダン人しかいかない パブリックビーチ。トホホ。
ほんとに、見事に地元人しかいない中、注目をあびながら入水!
ロイヤルダイビングセンターあたりの 有料ビーチはもっとキレイなんだろうなあ、と想像。やっぱここってキレイなんだけど ちょっとゴミとか浮いてるのよね。そこが残念。
さすがになぜ外国人がここにいるのだ、という感じで好奇心旺盛な人々が うようよと寄ってくる。海水浴どころではなくなっている。そう、私たちが わざわざ紅海まできて公衆ビーチへいくのは、この地元人と遊びたい。それだけなのだ。 (恋人とリゾートに来た、とかダイビングが大すき!というわけじゃないです ものね・・・わたしたちインチキ姉弟は)

その中で、
「ボクたちがお金をだすから一緒にグラスボートに乗ろうよ」と 誘ってくれたのが、アイマンとナシトゥーシャ。アンマン近郊で働いている 友人同士で、ここへはバカンスにやってきたそうだ。
グラスボートは30分ほど、海岸近くの珊瑚群あたりをトコトコまわって おしまいだったが、私たちもおごられっぱなしじゃイカン!と 岸にあがってジュースでおかえし。4人でしばらくワイワイ話すが、みんな なんでこんなに親切なんだろう??
ここが日本だとしたら、私たちは同じことができるかな???

大人気
あやしい東洋人を囲む会。みんなおもしろいやつ。

3時すぎにふたりと別れ、洗濯やらハガキ書きなどの雑務をこなす。 おいしいブーザ屋アタ・アリ(ジョルダンのハーゲンダッツと いおうか、地味なチェーン店。激ウマ)でのんびりアイスを食べたり、町をうろついたりして 夕暮れを待つ。やっぱ夕暮れでしょ。サンセットでしょ。
アザーンを聴きながら堤防の上に腰掛け、気分は金曜ロードショー。
今日の午後は、かなり気分がリゾート地モードになっている。 できれば静かにのんびりこの潮風を感じる時間が欲しいって思ってる自分がいた。 が、しか〜〜し!!ジョルダニアンはそんなこと許してくれないのだ! 私らがふたり座っていると、入れ替わり立ち代わり いろんな人がやってくる。
「ウェルカムジョルダン!」「どこいくの?」「なにしてるの?」 「中国人?」「職業はなに?」「レリジョンはなに?」「君たち夫婦?」 「ボクたちとぜひ明日○○へ行こう!」「シャイ飲まない?」「アラビア語しゃべれるの?」
んが〜〜ぁあああ〜〜!!人よすぎ!
頼むけん、いまだけ今日だけこの時間だけほっといてぇ〜〜!
このせんちめんたるでろまんちっくな雰囲気に浸らせてくれい!
本当に、なんてわがままなんだと我ながらおもう。
チョクもほっといてほしいとは思っていたらしいが、それでもちゃんと受け答えは していた。あとで「フハハ。ほっといてくれって感じが伝わったよ」と 言われてしまい、ちょっと自己嫌悪。ごめんねあのとき話かけてくれたミナサマ。反省してます。

夕暮れを存分に満喫後、アカバレストランでひさびさのを むさぼり(これがニンニクきいてて激ウマ)、市場をひやかし、夜の海岸でまたボーッとしてたら、 またジョルダニアンに話し掛けられ・・・ほんとそんなノホホンとした夜をすごした。
ここ2日ほどめまぐるしい日々だったので、こんなにのんびりしちゃっていいの?って 感じである。でもたぶん、海辺のリゾートってこれでいいのだ。

金曜ロードショー
スカーフをかぶった女性達が水際ピクニック

その後、部屋でチョクと明日の打ち合わせ。
アカバからワディムサへは午前中しかバスがでていない。つまり 明日夕方までアカバにいたい私たちは、車をチャーターするしか ないのだ。高いけどね。でもここは金より時間が優先!
「よっしゃ!きあが金ぜんぶだしたるわい!私の今回の旅の モットーはケチらない、リッチな旅だからね。ホホホ!」と鼻息も荒く 提案し、すでにアリのワゴン車で送ってもらうことになっていた。
で、明日のお昼はなにしよう〜。
「地図みると国境近いよね。サウジとの国境に行ってみない?」
この提案にはチョクもノリノリである。アリに連れていってもらおうよ、てなわけで さっそくアリに交渉しなきゃ! ホテルの窓から顔を覗くと偶然アリが車に乗り込もうとしている。
「アリィ〜〜!アリババー!ストップストップ!」
大声で止めるが聞こえないようだ。あー!アリが行っちゃうよー。
すると、アリの車のそばにいたオヤジが教えてくれたみたいで、 アリは車をとめて上を向いた。
「アリ!待ってて!下にいくから!」
アリは頼られるのが大好きである。最高の笑顔をしながら ゴゴゴーっとバックで戻って来た。

結局アリのレストランでまたミリンダを飲みながらのお話。アリはお金もうけ も大事だしちゃっかりしてるが、それ以上に自分が頼りにされることが本当に たまらなく嬉しいみたいで、なんともかわいいやつ。 そこでの会話もまたバカウケである。
「アリ、明日の午前中国境にいきたいんだ」
「えっ、どこ?」
「サウジとのボーダーだよ、ボーダー」
「?????」
不思議そうな顔をしたアリ、従業員もわらわらやってきて、なにか 話し合っている。なんだなんだ、どうしたんだという感じだ。
「えっ。通じないのかな?ボーダーだよう!」 せいいっぱい美しい英語を心がけて発音するが、みんなハトがまめ鉄砲くらったような クルック〜な状態である。
「アラビア語辞典でさがそう・・・あったこれこれ」
と、みんなに「国境」という意味のアラビア文字を指差してみせると、 いままで10Wくらいだったみんなのテンションが、いきなり パアアアッと明るい200Wに。そして
「なんだ、アハハ!ボルダルのことか!」
「アハハ!ボルダルね。チョク、きあ。英語では国境のことを ボルダルっていうんだよ〜。さっきの言葉は日本語かい?」

ちっ!違う!英語ではボルダルじゃなくてボーダーですう!!!
もう、まさに私たちのほうがトンチンカンな子どものようにあつかわれ、 その反応がおかしくておかしてくて、みんなとつられて大笑いしてしまった。
従業員のみんなともすっかり仲良くなったアカバの夜はこんなふうにふけていった。
ふたりともさっきの笑顔で急バック姿のアリボルダル事件を 思い出し、腹がいたくなるまでベッドの上で転がって笑いながら・・・・

金曜ロードショー
堤防でぼんやり。沈む夕日を見る貴婦人。



本日の出費
■ミニバス(ワディムサ−アカバ) 3JD
■宿代(SARGHE HOTEL) 6JD
■昼飯 4JD(ふたりで)
■レモネード 150F×4人分
■ジュース 300F
■ブーザ 450F×2個
■水 350F
■インターネット  2.5JD(15分)
■夕飯 3.5JD




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