ジョルダン人情編3◆蒼い紅海、赤いペトラVol.4



1999年10月2日(土)ペトラ

ゆったりと9時過ぎまで眠ったあと、今日はペトラにいきなり行かず ワディムサ中心部でワディラムへのシェアメイト探しを探すべくでかけた。
偶然であった日本人カップルを始め、老若男女国籍問わず声をかけてみるが みな、行かない。もしくは行ってきたという人だらけだ。
後でわかったのだが、ワディラム行きのシェアメイトが見つかりやすいのは アカバらしい。そうか・・・ん〜しまった。

チョクはちょっぴりいらだってるらしい。遺跡の中はひとりで行動したほうがお互いのためかなあ なんて思ったけど、シェアメイトを探すためにそういうわけにはいかない。 かなりわたしも心の中はフクザツだったが、明日ホテルにエカブが 迎えにくるまでなんとかしなきゃいけなかったので、なんとかやってこう。
実は旅の中で、この一日ほど精神的に辛い日はなかったくらい、 シェアメイト探しで追いつめられていた。
ちょっぴり泣きそうになったけど、きあはつよい子!泣くもんか!

いせき
でかい。そしてたどりつくまでに遠い・・・

陽も高く上った11時過ぎにようやくペトラ遺跡の中へ。
昨夜、越後からすすめられたギロチンの丘「犠牲祭壇」がお目当てだ。 入口から1時間ほど歩いたところにあるローマンシアター前、 左上にのびる階段をこれまたガシガシのぼる。 あああああああ〜!昨日と今日でどれだけのカロリーを消費したのかしらっ。
くねくねと続く階段を40分ほど登り続けただろうか。 ようやくてっぺんに到着だ。
おおおーたしかにすばらしい眺め。ペトラ遺跡が一望できるぞ。カラク城ほどじゃないが ビュウビュウ吹く風がきんもちいい〜〜〜。陽射しがキツいけどなんのその。 昼寝をきめこんだチョクをそっとしておくことにし、わたしもてっぺんで ボンヤリすごした。崖のはしっこに座り、なーにも考えずにただただボンヤリ。
昨日エドディルの前でであった警察官ともバッタリ出会った。
「あれ?アナタはエドディルの警察官じゃないの?」
「ボクらはマウンテンポリスといってこの遺跡の上のほうを 交代で警備してるんだよ。今日はこっちの地域なんだ」
「ワオ!マウンテンポリス!じゃあストロングマンじゃないとだめね。 あなたはストロングマンなのね?」
「ハハハ!イエースアイムストロングマン」


ネコ
ジョルダンで唯一人懐こかったネコちゃん

人懐こい猫とたわむれたり、近辺をうろついたりして夕焼けを待つ。 このインチキ姉弟ったら、お互いサンセットフェチなのだ。 16時半くらいからグングンと太陽が近くなり、影が濃くなっていく。 普段でも十分赤いペトラが、さらに紅に染まる姿は圧巻だ。
そそりたつ岩肌に掘られたたくさんのレリーフ状の遺跡が まるで血の流れる生き物のように、赤くその姿を変えていく。
ひと気のなかった犠牲祭壇にはいつのまにか、サンセット目当ての 観光客達が集っている。それぞれがじーっと静かに西を向いている。 4時間もサンセットを待ったのに、夕暮れのショーは30分であっという間に 幕をおろした。

太陽が山に沈んだ瞬間、犠牲祭壇を下り遺跡をでる。 すくなくともここからゲートまで1時間半歩くのだから、 真っ暗になってしまう。まあ、他の観光客がいるから安心なんだけどね。
疲れているのもあって、他の見どころはまわれなかったが、 別にもう悔いはない。ペトラ遺跡よ、お腹いっぱい楽しませていただきましたっ。 あ、でもムハマドたちに再会できなかったのが残念かな。

ワディムサ中心部で、シャワルマ(ホブスという丸いパンでケバブをくるくる巻いた 巻きサンドイッチのようなもので、激ウマ)などをバクバクたいらげ、 お店やさんなどをひやかす。みんな何かと寄って来て話し掛けてくるのが楽しい。 こんなに楽しいのに、魚の骨のようにワディラム行きのことが心にひっかかる。 正直もうウンザリしてきた。短い旅の期間ながらなんでお気楽で明日の予定も未定みたいな 旅を求めるわたしが、こんな精神的にいらいらしながら過ごさなきゃならないんだっ!

サンセット2
ラッキーストライクの唄がアタマの中に…・

ホテルにもどり、冷た〜いムッサスプリングに足をひたしながら、考える。 そして考えていたことをチョクに言うことにした。
「あのさ、とにかく120JDでエカブはワディラムいってくれるじゃん? チョクは、4人人数で割ったぶんの30JDでいいよ。わたしが90JDだす」
チョクはビックリしたようで、は?なんで!?と言い出す。
「だってもうエカブは明日迎えにくるのにさ、いいかげん疲れちゃったよ。いいんだ。 今回は高いお金払ってでも、砂漠にいくつもりだったし。もしチョクが いかないって言ってもアタシはひとりでいくよ。絶対後悔するもん。 モロッコから帰って来てわたし、すごく後悔したんだよ、砂漠ビバークできなかったこと。 もうあんな思いするのいやだからさ。今回はお金をケチるつもりないから ちゃんといっぱい用意してきたしね。だから大丈夫。心配しないでよ」

チョクはウーーーームと考えながら、
「わかった。じゃそうしよう。でもさもしかしたら誰かギリギリでも 見つかるかもしれないから、張り紙しようよ。ちゃんと内容を紙に書いて、 レセプションのとこに貼ってもらおうよ」
うん、そうしようそうしよう。サンキュウ、チョク。
I'm Looking for tourmate of WadiRum・・・から始まる 英文を読み直し書き直しでようやく22時ごろ仕上げ、 レセプションへ持っていった。
「おーい、イブラヒムいないの〜?」
すると、ロビーのソファに座ってた、見知らぬオヤジがどうしたどうした?と 声をかけてきた。オヤジ、あんただれよ。まあいいや、この張り紙はらしてもらえないかな?

サンセット
マイルドセブンの唄がアタマの中に…(そんなのない)

このオヤジ、マジマジと張り紙を見ながら、ひとこと。
「こりゃ高いよ。オレの友達ならひとり15JDでいけるぞ」
エエーッ!ちょっとオヤジィ!どういうことか 説明してもらおうか!
このオヤジハッサンは、ツアーの添乗員らしく、 客は近くのよいホテルに泊まっているが、自分は常宿であるこのムッサにドライバーと ともに泊まっているらしい。だからこういう旅行関係にはかなりウルサイようだ。
「本当だとも。その友人はワディラムに家を持つベドウィンだ。 ジタンといってとってもいいやつだ。わたしが紹介したといえば必ず この金額でいってくれるはずだろう。フレンドプライスでな」
「ハッサン!そのジタンという人に連絡はとれる!?」
「今日はたしか何かのツアーにいってるはずだが、問題ない。彼は 携帯電話を持っている。ちょっとかけてみよう。さあ、こい!」

・・・砂漠のベドウィンが携帯電話・・・なんてすごい世の中なんだ。
で、さあ、こい!ってどういうこと???
わけのわからないまま、ハッサンの車に乗せられたきあチョク。 その格好は、お出かけモードのそれではなく、すっかり寝るだけの 短パン、風呂上がりボサボサ頭なのだ。ひええ〜ハッサーン!

ハッサンのナイスなバンにのって連れていかれたのは、 ペトラ遺跡入口付近にたつ豪華ホテルだ。ウギャー!なにこれっ!
「なに?ハッサンなんなの?」
「まあいいから、さあさあ」

わけのわからぬまま、回転ドアをくぐり、ぴかぴかの調度品のならぶ ロビーをすりぬける。ああ・・・こんな格好でハズカシイ。
こんなとこにくるってわかってるなら、貴婦人らしくドレスでも着てきたものを・・・(持ってないけど)。
そしてさらに奥の扉を開けると・・・そこはプール際のレストランだった。 しかも、そんじょそこらのプールじゃない。 まずはギターの生演奏がポロロ〜ンと響き、ライトアップされた水面には薔薇のリースがぷっかぷか 浮かび、そこに集う西洋人たちはみな美しく着飾っている。 なんだ、こいつら?というようなみんなの視線がイテッ、イテテテ!
ハッサン!あんたここで何しようってのさ!キー!

ケバブ屋
シャワルマ用のケバブ屋にて。ウマ〜い(泣)

ハッサンはまずそこからジタンに電話をし、なにやらモゴモゴ話している。
わたしらは眠いのもあって、なぜ自分たちがここにいるのか分からない状態で ちっこくなっていたが、こういう上流階級の世界が垣間見れてちょっと面白くもあった。
「えーまずいまジタンに電話したところ、 やっぱり15JDじゃ無理だった。ひとり20JDでOKだ。 ただし、明日忙しいらしいので、ワディラムとアカバに別れる分岐点で待ち合わせになる。 もちろん、ガイド代、夕飯代、ベドウィンテントでの宿泊代すべてインクルード。シャワーもあるぞ。どうかな?」
そりゃそうだ!15JDなんて安すぎるもん!20JDでも十分すぎるよ。
「オッケーハッサン!サンキュー!」
ガッチリ握手をして、契約成立だ。
実は昨夜、エカブの携帯電話に電話をし、日曜日確実にムッサに来てくれと念を押しておいたのだが、 この話にのらないバカはいない。すまんエカブ、この埋め合わせは今度。

というわけで、さっさとそのプール際レストランを去り(もちろん3人ともなにも注文しないまま)、 車に乗り込む。あー眠いね。もう23時じゃん帰って寝よう寝よう。・・・しかしハッサンは手強かった。
「ムハマド、ハディジャ、酒でも飲もうか?おうそうだそうだ、酒を買おう」
おい、私たちはなんにも言ってないつうの!
しかもわたしは酒が飲めないつうの!
ハッサンは粘り強く、何軒もホテルなどをまわり酒を仕入れようとするが、どこもないらしい。 ハッサンはよっぽど酒が好きらしく、とうとう私たちを連れ、しっかりと酒がのめる ディスコへと入っていった。なんでやねん!
ひーえーー。岩をくりぬいたようにつくられた、粋でゴージャスそうなディスコ。もちろんホテル併設だ。 まばらに踊るのはすべて西洋人。・・・わたしディスコなんかもう7年ぶりよ。
そして極めつけは、リッキーマーティンの曲が大音量で流れていたことだ。 わたしは一生忘れないだろう。ヨルダンを旅していた頃、リッキーの唄が流行っていたということを・・・。

五つ星にこの格好
帝国ホテルにこの格好で入ったと思ってください・・・

アラブのお酒、アラックをすすめられたが 飲めず、ハッサンが満足するまで約30〜40分ほどぼーっとカウンターに座り、 ケツをもぞもぞさせながら待つ。ね、眠いよ、ハッサン・・・
ハッサンは、毒気のないいいオヤジである。だからノコノコついて来ているのだが、 やはりムスリムなので堂々と酒がのめないのだろう。こういう外国人のいる店で 外国人といっしょに酒を飲む。これが唯一の楽しみのように見える。フフフ。憎めないオヤジだぜ。
「ハディジャたちはアンマンではどこに泊まってるんだ? わたしは明日アンマンに戻るから、キミたちがアンマンに帰ってきたらぜひ会おう。 そして一緒にディスコにいこう」
などとまた懲りずにいいやがる。あっははははは!!ハッサン最高だよ。 そしてもちろん、私たちのミリンダのお金もお酒の代金も払ってくれた。

その後、ムッサに戻り、待ち合わせ場所や時間決めなどのこまかい打ち合わせをして 1時過ぎにやっと部屋に戻れた。もうクタクタだ。
しかし、こんなギリギリにおいしい話がふってくるとは思ってもみなかった。 ジョルダンって京都の気質ににてない?って思った。 一見さんではなく、知り合いを通すとぐんと対応がよくなり、金額も安くなる。 つまり、ジョルダンではどんどん現地人と出会ってそのツテで旅をしたほうが ダンゼン楽しみも増すみたいだ。
今日の心の重さが嘘みたいに晴れた。明日はいよいよ、アラビアのロレンスの砂漠。 もう、なんでもこいっ!


本日の出費
■タバコ 850F
■水・ジュース 750F
■タクシー 2人で500F
■シャワルマ 500F×4個
■タバコ 800F×2個
■アイス 200F
■もも (1kg)600F
■タクシー 2人で1JD



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