ある司祭の残せし朽ちかけたメモ書き
「大地に日は照らされ、種より新芽が芽吹く。
初芽は育み成長し、幸に見舞われ花となる。
世の理法を与えられ、花は名を持ち意味となり、花は美となり咲き誇る。
種は零れ死が宿り、花は朽ち果て腐り落つ。
花は砕け名を消して、大地の土へと帰り行く。
始まり産まれ、育ち幸持ち、縛られ理知り彩られ、
死持ち腐敗し、花消え終わる。
始まりは唐突。されど終わりもまた然り。
しかし花終わらず。
零れ落ちた種はまた日の導きを受け、芽吹くであろう。
時の流れは留まらず、時の流れは変わらず、何があろうと時は流れる。
我ら見る者なり。
生を死をただ見る者なり。
始まりを終わりをただ見る者なり。
時の無情を見、時の雄大を見よ。
我ら人、時に逆らう事あたわず。
私は是を記そう。
時に一葉を浮かべよう。
されど時に是は朽ち、消え行くべきもの。
残るもまた定め。朽ちるもまた定め」