【人物概略】
エクアドルで特筆すべき人物といえば、まず政治的には王家。
そして各領地、自治区の代表である七盟雄があげられるであろう。
近年の『王位擾乱』――エクアドルの兄弟王子が、王位を巡って起こした国内での騒乱に伴って、国内の様子も大きく変化した。
ここでは【エクアドル王家】【三大公爵】【四族長】【その他】の四項目に分け、エクアドルの要人たちを紹介するものである。
【エクアドル王家】
・レオンハルト=スヴェン=リヒト=エクアドル/人間/男/18歳
[台詞例]
「俺がエクアドル国王、レオンハルトだ。諸君が今回の仕事を担当する者たちか――成程、良い目をしている」
「メイラ、シチューを作ってみたんだが。食べていかないか? ああ、廷臣たちには内密に――な?」
「例の暗黒教団の幹部か――断首に処せ」 と、官吏に命じて。一人になり、天を仰ぎ。 「王というのも、罪深い職だな」 溜息。
政変を起こした兄王子によって冤罪をかけられ追放されるも、各種族を味方につけて王位争いを制し、暗黒教団によって蘇った害神を再封印する武勲を立て、王冠を手にした若き国王。
年齢に反してやけに老けて見えるいかつい顔立ちと、強靭な巨躯のために、若さよりもある種の貫禄が感じられる。
ト・テルタの信者であり、また剣士としても体格相応の腕を持っているが、ひそかな趣味は料理である。
兄王子との争いで彼を助けたのは月灯り亭の冒険者であり、そのため冒険者に対して友好的。
彼の戴冠式で彼が神官からの戴冠を拒否し、政変の間、彼を助けた6人の冒険者の前に跪き、冠を受けたという逸話は有名である。
・エルメイラ=バレンシュタイン(旧姓)/人間/女/18歳
「――愛し合って、一緒にって決めたら、何かいろいろとついてきちゃったのよね……」
エクアドル王妃であり、元月灯り亭冒険者(http://lune.serio.jp/sw4/data/1193146225.html)
その婚姻を巡ってはいくつかの反対もあったが、七盟雄たちがおおむね婚姻を支持したため、実現の運びとなった。
現在でも時折城を抜け出し、その技能を用いて城下や、時にはエクアドル国内を見て回っては、地元の問題の解決に助力することがあるという。
しかし王妃としての立場もあるため、発見した大小の問題に対し、自力ではなく冒険者を雇って解決を試みることも多いようである。
その自由奔放で明るい性格はクラケット族に対して受けが良く、クラケット族長クライスとは特に友人関係にあるようだ。
【三大公爵】
・フランシス=フォン=シャルロー/人間/男/49歳
「商売とは、お互いが得をする形が最も理想的なものです。――では、よろしくお願いします」
恰幅の良い温和な中年男性。エクアドル国内でもハト派の筆頭。三大商人誘致政策の中心人物である。
トロウとの国境付近が所領で、エクアドル経済に大きな影響力を持つことから、“金貨公”の二つ名を持つ。
基本的に温和を絵にかいたような人物だが、三大商人との繋がりも深く、その経済への見識と政治的な感覚は侮れない部分がある。
彼はエクアドルでの商業流通に大きな関わりを持つため、街道のトラブルなどの問題に対して、冒険者に依頼をすることも多い。
・カーバル=フォン=トラシヴァル/人間/男/63歳
「トヴァシュトラとの関係。――それは我が国でも最重要の課題だ」
引きしまった体躯の老人。既に引退し、長男のブランドーに公爵の地位を譲ったものの、実権は彼が握っているというのがもっぱらの噂である。
タカ派の筆頭で、先の王位争いで兄王子に味方をしたが、現在ではレオン王との和解は成立している様子である。
首都近郊の領内には農地が多く、酒造(特に名物オレンジ酒)も盛んなため、“玉杯公”の二つ名で呼ばれている。
農地の開発を盛んにおこなっているため、領内で遺跡などが発見されることもままあり、冒険者を雇って調査を依頼することもあるようだ。
・マリア=フォン=ラスクード/人間/女/18歳
「父上に代わり――領民たちは、私が守る。」
凛とした騎士風の若い娘ながら、ドワーフと協力しての鉱山業と、政治的中立の確かさで名を知られた“銀脈公”の名を継ぐ三大公爵の一人でもある。
先の王位争いで父イーヴァインが死亡したため、一人娘であり、レオン王の学友でもあった彼女が跡を継いで女公爵となることになった。
先代から引き継いだ強力な騎士団と多くの財貨を保有しているため、求婚者も多く、彼女の婿は誰となるのかと、政界の注目を集めている。
新任の領主であるため領内のトラブルの処理に、フットワークの軽い冒険者を雇うこともあるようだ。
【四族長】
・ドラム=ラウンドテーブルマウンテン/ドワーフ/男/152歳
「ワシがドラムじゃ。――して、用件じゃが……」
ドワーフ自治区を納める、ドワーフ族の長。禿げ上がった頭に、白く長い髭と眉。
柔和な顔立ちだが、意志は固く、義を重んじる“まさにドワーフ”といった様子の人物であるというのが、専らの評判である。
近年、ドワーフ自治区のあるラウンドテーブルマウンテン付近は再開発が進んでいる。
その折、廃坑などから魔物が湧いたり、地図の失われた地下道の再調査が必要になったりと、トラブルも多く、冒険者の出番も多いようだ。
・クライス=G=クラケットプレーン/クラケット/性別男/年齢不詳
「やぁ、君たちは冒険者かなっ? それじゃあお願いがあるんだけど――」
小柄な少年の風貌のクラケット族長。通称、“千の耳”のクライス。
クラケットの常か放浪癖があり、年の半分ほどは己の仕事を放り出して、政治顧問のフェティマ(ダブル/女)に悲鳴をあげさせている。
しかし「本当に必要なとき、彼はそこに居る」「本当に必要なことは、彼はいつも知っている」とも噂され、クラケットながら政治家を務めるその能力は、伊達ではないようだ。
クラケットプレーンでは王位を巡る争いの際に暗黒教団が暗躍し、多くの不死者がばらまかれた。そのため、討伐に冒険者の手を借りることもあるようだ。
・ヴィーザル=ディナフォレスト/ハイエルフ/男/500歳以上
「…………何の用か。」 (長い沈黙のすえ。泉に釣り糸を垂らしたまま)
銀の髪の長身のエルフ族長。外見は若々しいが、雰囲気は老成した仙人や賢者のそれ。
エクアドルの建国王と友人であったとされ、彼の頼みでこの国の行く末を見守っている。また、ユマ・ハルワの精霊使いの試練に用いられる洞窟の管理者でもある。
恐らく周辺地域でも最も優れたシャーマン(レベル8)であるが、森や自身が極度の危険に晒された時以外にその力を振るうことはめったにない。
拒みの森には多くの危険な地域があるが、特に危険度の高い場所には彼が迷いの森の術(メイズ・ウッズ)で封鎖を行っている。
もしもその奥に踏み入らねばならないことになった場合、寡黙で保守的な彼を、なんとか説得する必要があるだろう。
・ルナフレア=ヴァ・ナハ/グリィラル/女/130歳
「黒き月の氏族の名に賭けて、国境の安全は守ってみせよう」
銀色の鱗に、俊敏そうな身体つきと知性ある鋭い瞳のグリィラルの女性。かつてのトヴァシュトラの侵攻で兄が死亡し、兄の子の後見として族長を務めている。
高齢のため、そろそろ兄の息子、つまり甥であるサーリィへと族長を譲る予定であるとされ、引き継ぎに忙しいようだ。
トヴァシュトラとは近年は国家間の関係は表向き良いものの、国境を治めるいくつかの領主とヴァ・ナハは一部険悪な状態が続いており、幾度か小規模な小競り合いが起こっている。
またエクアドル王国での存在法暫定改正に伴い、帝国から逃亡奴隷が多く亡命してきており、不逞亡命者による治安の悪化も問題となっている。
そのため、冒険者にトヴァシュトラ関連の依頼が飛ぶことも多いようだ。
【その他】
・シルヴィー/フェンラン/男/年齢不詳
・ルカ/フェンラン/女/年齢不詳
「よ、俺がフェンラン海賊、“蒼翼”の片翼、シルヴィーだ。」「気軽に名乗るのはやめなさい。海賊なんだから」「…………」
羽休め島を拠点とし、反トヴァシュトラの活動を行う、フェンラン海賊を仕切る頭目。
二人揃って“蒼翼”と呼ばれており、シルヴィーは戦士、ルカは精霊使いにして弓手である。
近年、エクアドルでも海運が盛んになってきているが、彼らがエクアドル船籍の船を襲うことは相変わらず無い。
また王位を巡るの争いの際も、レオン王に協力していたという通説があり、王と彼らの間に、なんらかの密約が存在すると噂される。
彼らの拠点、羽休め島は海の難所であり、今だ公的な調査の及んでいない場所が多くある。
もし、なんらかの理由でそこを調べる場合は、近海を知り尽くした彼らと接触する必要があるだろう。
・アマデオ=フォン=アロマグラド/人間/男/42歳
「どうも私がアロマグラドの領主、アマデオと。ああ、そうそう、聞いて下さい――最近うちの息子が(以下、長すぎる息子自慢」
恰幅の良い中年の男性で、アロマグラドの領主を務めている。
各種族の自治区と近く、また険しい土地である拒みの森やホワイトクラウンも近いアロマグラドを、適切に切りまわす良い領主である。
欠点は、若くして奥方を亡くしたためか、一人息子のウィレムを溺愛していることだろうか。
当の成人したばかりの息子のほうは、その溺愛ぶりに少し苦笑気味ながらも、父親の気遣いに理解は示しているようだ。
実際、彼は若くして騎士としても魔法士としてもまず一人前の腕前で、地元の子供たちにも慕われる好青年であり、父の自慢もあながち的外れではない。
拒みの森やホワイトクラウン、名産の香水や香草酒にまつわる問題や、種族間の喧嘩騒ぎや対立、時には領主から息子へのプレゼント探しなど、
アロマグラドでの冒険者の仕事は多いようだ。
・ホイミン(自称)/クラケット/男/年齢不詳
「ベホイミ!」 掟を破った盗賊の顎を短剣の柄でかち上げ、叩き割って。 「悪いこと考える脳みそは、これで治ったかな? ん?」
黒い覆面をかぶり、ミスリルの小剣と短剣を佩いた両手利きのクラケット。名前はホイミンを自称。
それがエクアドルのシーフギルド長にまつわる情報の全てである。
これまでのシーフギルド(及び前身たるクラケット窃盗団)の、「笑って済ませられないコトはしない(=殺さない、犯さない、貧者から盗まない、麻薬を扱わない)」
の掟を引き継ぎ、掟を破る者たちには苛烈な制裁を加える、強力なギルド長である。
しかしクラケットの常か放浪癖があり、年に半年はギルドを開けている。その間を狙って掟破りに挑む不心得者も多く、幹部たちは頭を悩ませている。
(GM用情報=クラケット族長クライスと、シーフギルド長ホイミンは公には知られていませんが同一人物です。
クラケット族長の耳の速さ、知識の多さや神出鬼没性は、シーフギルドの確かな情報網に根ざしているのです)
・ブルース=フォン=トラシヴァル/人間/男/18歳
「んー、トラブルか? まぁ、手ぇ貸してやろうじゃねぇかw 何があった?」
金髪碧眼の伊達男風。現在のトラシヴァル公爵の甥、カーバル前公爵の二男の、その三男。それがブルースである。
が、首都エクアドルの町では彼はこう呼ばれる。“玉杯公さまのところのドラ息子”と。
『月下美人』という娼館に入り浸り、あらゆる悪所で遊び、酒と賭博をたしなむ彼は、おおむねそのように認識されている。
しかし性格が悪いわけではなく、下町でのトラブルや裏通りの事情にも詳しい兄貴分といった様子だ。
何か街でトラブルに見舞われた時に遭遇できれば、気前よく協力してくれるだろう。
(GM用情報=彼は、エクアドル王国で試験的に編成された諜報部隊の指揮官です)
(エクアドルの諜報活動は元来シーフギルドが担っていましたが、発展に伴い専門の部隊が必要となってきたのです)
(彼は王の勅命のもと、入り浸っていると言われる娼館を拠点に、シーフギルドの協力の下で諜報員の練成や運用を行っています)
(街でのトラブルの情報に詳しいのも、彼らの訓練課程でそのような情報収集を行っているから、という事情があります)
(未だ練成中の部隊ですので、対処できないトラブルには冒険者の力を借りることもあるかもしれません)
(無論、放蕩息子が街のトラブルに嘴を突っ込むために冒険者を雇う――など、なんらかの体裁を整え、諜報部隊そのものの秘密は守りつつ)
・ヴェクナ教団員/種族さまざま/性別さまざま/年齢さまざま
「不死と終焉の我らが神よ――!」 「復活を――!」
エクアドルで活動する暗黒教団で、最も有名なものの一つである。彼らの信仰する害神ヴェクナは不死と終焉の神と呼ばれ、ウェンターナの眷属であるとされる。
ヴェクナは不死者に埋め尽くされ、生と死の循環の止まった世界こそが真の終焉であるという、歪んだ教えを持っている。
そもそもは建国王によってエクアドルの地に封じられたとされるヴェクナだが、近年、教団の暗躍により再びグラードに姿を現した。
当代のレオン王と彼を助けた冒険者たちによって再度封印されたものの、ヴェクナ教団が神の復活を諦めることはないだろう。
ヴェクナの信奉者は、死した愛する者を蘇らせようとする者から、ある種の終末思想(この世は知恵なき不死に埋め尽くされて終わり、ヴェクナ神の信者のみが知性ある不死者として蘇り、
救済される、といったような考え)に憑り付かれた者まで様々だが、彼らが悪意をもって活動した場合、不死者を操るという性質上、大きな被害が出やすいことが特徴である。
不死者が人を殺し、その死者が不死者と化す連鎖によって、軍勢の如き大量の不死者が都市を襲った例まであるのだ。
そのため、エクアドル当局はヴェクナ信者に多額の賞金をかけ、その信仰に厳罰をもって臨んでいる。
彼らヴェクナ信者を一人でも倒すことができれば、懸賞金によって大きな収入が得られることだろう。
・ネオ・デュカット構成員/種族さまざま/性別さまざま/年齢さまざま
「愚かなる王に災いあれ!」 「この大地、異族の好きにはさせぬぞ――」
トロウで存在法の改正闘争に敗北を喫した秘密結社、デュカット構成員の一部が、隣国であるエクアドルに逃走、潜伏。
エクアドルでの存在法を旧来のものに戻そうとしているのが、彼らである。
現在のレオン王は多種族共生を旨とした考えを、そのデメリット(治安の低下の懸念、労働供給の過多化の恐れなど)を理解した上で押し進めており、
しかもそれらが一定の成功を収めているため、彼らにとって現在のエクアドルの政治は苦々しい状況である。
この状況をひっくり返すために、ネオ・デュカットは合法非合法を問わず、多くの活動を行っている。
エクアドルで冒険をする者たちも、いずこかで、その陰謀とぶつかることがあるかもしれない。